「親の財産って、どれくらい税金がかかるの?」「うちは相続税なんて関係ないと思っていたけど大丈夫?」「家族でもめないように、生前にできることはある?」――相続や贈与は、誰にとってもいつかは向き合うテーマです。
相続は「お金持ちだけの話」と思われがちですが、実は持ち家がある家庭なら、ごく普通の世帯でも相続税の対象になることがあります。何も知らずにいると、いざという時に慌てたり、家族でもめたりする原因にもなります。
この記事では、相続税の仕組み・生前贈与の活用法・家族でもめないための対策を、2026年版の最新情報でわかりやすく解説します。

相続税の基本:誰に・いくらかかるのか

相続税とは、亡くなった人(被相続人)の財産を受け継いだときにかかる税金です。ただし、すべての相続に税金がかかるわけではありません。重要なのが「基礎控除」です。
基礎控除の計算式
相続税の基礎控除額は、次の式で計算します。
基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
遺産の総額がこの基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。たとえば、相続人が「配偶者+子ども2人」の3人なら、基礎控除は次のようになります。
3,000万円 +(600万円 × 3人)= 4,800万円
つまり、この家庭では遺産が4,800万円までなら相続税はかかりません。逆に、持ち家+預貯金で4,800万円を超えると、超えた分に相続税がかかります。都市部に持ち家があると、意外と基礎控除を超えるケースもあるので注意が必要です。
相続財産になるもの
- 現金・預貯金
- 不動産(土地・建物)
- 株式・投資信託などの有価証券
- 生命保険金(一部非課税枠あり)
- 自動車・貴金属・骨董品など
なお、借金などの「マイナスの財産」も相続対象です。プラスの財産より借金が多い場合は、「相続放棄」という選択肢もあります。
生前贈与で計画的に資産を渡す

相続税を抑える代表的な方法が「生前贈与」です。生きているうちに、計画的に家族へ財産を渡しておくことで、相続時の財産を減らし、結果的に相続税の負担を軽くできます。
年間110万円までの贈与は非課税(暦年贈与)
贈与税には「年間110万円の基礎控除」があります。1人が1年間に受け取る贈与が110万円以下なら、贈与税はかかりません。これを「暦年贈与(れきねんぞうよ)」と呼びます。
たとえば、毎年子ども2人に各110万円ずつ贈与すれば、年間220万円を非課税で渡せます。これを10年続ければ2,200万円。コツコツ続けることで、大きな額を税金をかけずに移転できます。
暦年贈与の注意点
- 定期贈与とみなされない工夫を:「毎年100万円を10年」と最初から約束していると、まとめて課税される恐れがあります。毎年その都度、贈与契約を結ぶのが安全です
- 記録を残す:贈与契約書を作り、銀行振込で記録を残しましょう
- 相続開始前の贈与に注意:亡くなる前一定期間内の贈与は、相続財産に加算されるルールがあります(制度改正で対象期間が順次延長)
このほか、教育資金や住宅取得資金の贈与には、まとまった額を非課税にできる特例制度もあります。大きな額を贈与する場合は、税理士などの専門家に相談すると安心です。
家族でもめないための相続対策

相続のトラブルは、「お金持ちの家庭」だけで起こるわけではありません。むしろ、遺産が「自宅+少しの預貯金」というごく普通の家庭ほど、分けにくくてもめやすいと言われます。家族の仲を守るためにも、生前の対策が大切です。
①遺言書を作成する
最も効果的なのが遺言書です。「誰に何を残すか」を明確にしておくことで、相続人同士の争いを防げます。especially不動産は分けにくいため、遺言で指定しておくと安心です。公証役場で作る「公正証書遺言」が、確実で無効になりにくくおすすめです。
②財産を「リスト化」しておく
どこにどんな財産があるのかを、エンディングノートなどにまとめておきましょう。銀行口座・不動産・保険・証券など、財産の全体像が分かるだけで、残された家族の負担が大きく減ります。
③家族で早めに話し合う
相続の話はタブー視されがちですが、元気なうちに家族で方針を話し合っておくことが、最大のトラブル防止策です。「縁起でもない」と避けず、前向きに「家族の未来を守るため」と捉えて話し合いましょう。
相続税はいくらかかる?税率と計算の流れ
基礎控除を超えた場合、実際にどれくらいの相続税がかかるのでしょうか。相続税は「超過累進課税」といって、遺産が多いほど税率が高くなる仕組みです。
| 各人の取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | 0円 |
| 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
計算の流れは、①遺産総額から基礎控除を引く→②法定相続分で分けたと仮定して各人の税額を計算→③合算して実際の取得割合で按分、という手順です。やや複雑ですが、「基礎控除を超えた分に、10%〜の税率がかかる」とイメージしておけばOKです。
配偶者は大きく優遇される
配偶者には「配偶者の税額軽減」という大きな優遇があります。配偶者が相続する財産は、「1億6,000万円」または「法定相続分」のどちらか多い金額までは相続税がかかりません。そのため、配偶者が相続する分には、ほとんど相続税がかからないケースが多いです。
知っておきたい相続の手続きと期限
相続が発生すると、さまざまな手続きが必要になります。中には期限があるものもあるので、あらかじめ知っておきましょう。
| 手続き | 期限 |
|---|---|
| 相続放棄・限定承認 | 相続開始を知った日から3ヶ月以内 |
| 所得税の準確定申告 | 相続開始を知った日から4ヶ月以内 |
| 相続税の申告・納付 | 相続開始を知った日から10ヶ月以内 |
特に「相続放棄」の3ヶ月という期限は短いので注意が必要です。借金が多い場合などに相続放棄を検討するなら、早めに判断しなければなりません。相続税の申告も10ヶ月以内と、意外とタイトです。期限を過ぎるとペナルティが課されることもあるため、相続が発生したら早めに動き出すことが大切です。
不動産の相続で知っておきたいこと
相続財産の中でも、特に扱いが難しいのが不動産です。現金と違って「キッチリ分ける」ことができず、トラブルの原因になりやすいからです。
小規模宅地等の特例で評価額が下がる
亡くなった人が住んでいた自宅の土地は、「小規模宅地等の特例」を使うと、評価額を最大80%減額できる場合があります。これにより、相続税が大幅に下がることがあります。ただし、同居していたかどうかなど、適用には条件があるため、事前に確認しておきましょう。
相続登記が義務化された
2024年4月から、相続した不動産の名義変更(相続登記)が義務化されました。相続を知ってから3年以内に登記しないと、過料が科される可能性があります。「親の家を相続したけど名義はそのまま」という状態は、今後はリスクになるため、忘れずに手続きしましょう。
相続・贈与 よくある疑問 Q&A
Q:うちは財産が少ないから相続税は関係ない?
A:基礎控除(3,000万円+600万円×人数)以下なら相続税はかかりません。ただし、持ち家がある場合は土地・建物の評価額で意外と超えることもあります。一度、財産の総額を概算してみることをおすすめします。
Q:生前贈与と相続、どちらが得ですか?
A:ケースによります。財産が多く相続税が高くなりそうな場合は、生前贈与でコツコツ移転したほうが有利なことが多いです。一方、財産が基礎控除以下なら、無理に贈与しなくても相続でよい場合もあります。状況に応じて判断しましょう。
Q:孫に贈与してもいい?
A:孫への贈与も年間110万円まで非課税です。孫は法定相続人でないことが多いため、相続前贈与の加算ルールの対象外になりやすく、相続税対策として有効な場合があります。
Q:専門家に相談すべきタイミングは?
A:財産が基礎控除を超えそうな場合や、不動産が複数ある、事業を継いでいるなど複雑な場合は、早めに税理士に相談しましょう。生前に相談することで、節税と争い防止の両方の対策が立てられます。
相続の基本「法定相続分」を知っておこう
遺言書がない場合、誰がどれだけ相続するかは、民法で定められた「法定相続分」が目安になります。これを知っておくと、相続の話し合いがスムーズになります。
| 相続人の組み合わせ | 配偶者 | その他 |
|---|---|---|
| 配偶者+子 | 1/2 | 子で1/2を分ける |
| 配偶者+親 | 2/3 | 親で1/3を分ける |
| 配偶者+兄弟姉妹 | 3/4 | 兄弟姉妹で1/4を分ける |
たとえば「配偶者+子ども2人」の場合、配偶者が1/2、子どもがそれぞれ1/4ずつとなります。ただし、これはあくまで目安であり、相続人全員が合意すれば、自由な割合で分けることもできます。遺言書があれば、原則として遺言の内容が優先されます。
遺留分にも注意
遺言で「全財産を1人に」と書いても、配偶者や子などの相続人には「遺留分」という最低限保証された取り分があります。遺言を作る際は、この遺留分にも配慮しないと、後々トラブルになることがあります。偏った内容にする場合は、専門家に相談しながら進めましょう。
相続対策は「元気なうち」が鉄則
相続・贈与の対策で最も大切なのは、「元気で判断能力があるうちに始める」ことです。なぜなら、認知症などで判断能力が低下すると、贈与も遺言の作成も、不動産の売却もできなくなってしまうからです。
「まだ早い」と思っているうちに、対策のチャンスを逃してしまうケースは少なくありません。生前贈与は長く続けるほど効果が大きく、遺言も元気なうちに余裕を持って作れます。相続対策は、早く始めるほど選択肢が広がり、効果も高まるのです。
「縁起でもない」と先延ばしにせず、親子が元気なうちに、家族の未来を守る前向きな準備として取り組むことをおすすめします。それが、残された家族への何よりの思いやりになります。
生命保険を相続対策に活用する
意外と知られていませんが、生命保険は相続対策の有効な手段になります。死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」までの非課税枠があるためです。
たとえば相続人が3人なら、1,500万円まで非課税で保険金を受け取れます。現金で1,500万円を相続するより、生命保険として受け取るほうが、その分相続税を抑えられるわけです。
さらに、生命保険には「受取人を指定できる」「現金ですぐ受け取れる」というメリットもあります。遺産分割でもめている間も、保険金は指定された受取人がすぐに受け取れるため、葬儀費用や当面の生活費に充てられます。相続対策として、生命保険の活用も検討する価値があります。
新NISAの資産も相続対象になる
近年、新NISAで資産形成をする人が増えていますが、NISA口座の資産も当然、相続の対象になります。ただし、相続時にはNISAの非課税メリットは引き継げず、相続人の課税口座に移管される点に注意が必要です。
とはいえ、コツコツ築いた資産を家族に残せるのは大きな安心です。資産形成と並行して、「将来どう引き継ぐか」も少しずつ考えておくと、より万全な備えになります。資産を「増やす」だけでなく「次の世代へつなぐ」という視点も、長期的なお金の計画には欠かせません。
相続・贈与は専門用語が多く、難しく感じるかもしれませんが、「基礎控除」「年間110万円の非課税贈与」「遺言書」という3つのキーワードを押さえるだけでも、対策の方向性が見えてきます。完璧を目指さず、まずは家族で一度話し合ってみることから始めてみてください。
まとめ:早めの準備が家族を守る

相続・贈与の基礎知識のポイントをまとめます。
- ✅ 相続税は「3,000万円+600万円×法定相続人数」を超えた分にかかる
- ✅ 持ち家がある家庭は意外と対象になりやすい
- ✅ 生前贈与(年間110万円まで非課税)で計画的に資産移転
- ✅ 遺言書・財産リスト・家族の話し合いでトラブル防止
- ✅ 大きな額は専門家(税理士)への相談が安心
相続・贈与は、難しそうに見えて、基本を知っておくだけで大きな安心につながります。大切なのは「早めの準備」。元気なうちから少しずつ対策しておくことで、いざという時に家族が困らず、円満に資産を引き継げます。まずは自分の家庭の財産がいくらあるか、基礎控除を超えそうかを確認することから始めてみましょう。
▶ 関連記事:生命保険の見直し方 / 新NISAの出口戦略

コメント